映画「秋刀魚の味」

 小津安二郎監督の遺作「秋刀魚の味」をDVDで観ました。

 妻を亡くして24歳の長女路子と次男和夫の3人で暮している初老の会社員平山。長男は既に結婚して団地に住み、共働きの家庭を築いている。

 自分と次男の世話を長女路子に任せている平山だが、同窓会に出席した恩師が、父の世話に追われて婚期を逃した娘と暮らしている事を知って、路子の縁談を真剣に考えるようになる。

 そういう、別に大した出来事もない日常を淡々と描いた作品ですけど、登場人物の気持ちが画面から伝わって来るような渋い作品ですね。

 時代の背景が今と違うから、父親の世話をするためになかなか嫁がない娘と言っても、何だかピンと来ないかも知れないけど、当時はこんな時代だったんだろうなぁ。

 24歳で結婚するのが当たり前、年頃のお嬢さんや青年には縁談を世話する人がいて当たり前の時代は、まるで別の国の事を描いているような気持ちさえする作品ですけど、ここに描かれる娘を嫁に出す父親の寂しさや歳を取ることのわびしさというのは、何だかヒシヒシと身につまされる気分です。

 こういう映画を観ながら、良いなぁと思ってしまうとは、我ながら本当に歳をとったものです。


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