映画「麦秋」

 小津安二郎監督の1951年の名作映画「麦秋」をDVDで観ました。

 北鎌倉に住む一家の娘の結婚を主題にして家族のあり方などを描いた作品です。

 小津作品らしくて、別に何か大きな出来事が有るわけではないし、当時の大人気スター原節子も私の好みとは離れていますけど、全体的に日本の原風景という感じが良いですねぇ。

 出演者が話す言葉が、どことなく気品が有るように思うのは何故なんでしょうか。今ほど物に恵まれているわけでなく、たまに食べるケーキの値段に驚きながら楽しめる生き方が優雅に感じる。この家庭の主人は医者ですから、けっして貧しい家庭ではないのにね。

 東山千栄子の着物姿などを見ると、そういえば私が子供の頃には和服を着たおばさんって結構身の回りに居たし、着こなしも近頃の晴れ着みたいにキッチリしていなくて、こんな風にゆったりとした感じだったよなぁと懐かしく思い出します。

 人生を共に生きてきた老夫婦が、娘を嫁がせてから長男夫婦の家を出て、夫婦の実家のある大和へ引きあげて行き、麦の穂がなびく麦秋の季節の映像で映画は終わりますけど、何とも言えない良さがありますねぇ。

 まだそれ程豊かではなかった時代にある、ゆったりとした別の意味での豊かさ。

 人口が減って年寄りが増えて、成長が止まってしまった現代の日本が向かう先が、こういう日本であるならば、そんなに悪い事でもないのかも知れないと思いました。

 それにしても、この1951年の麦秋で笠智衆と東山千栄子は親子の役で、それ程不自然でもないのに、1953年の東京物語では夫婦役ですよ。笠智衆ってすごいなぁ・・・。

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