小津安二郎「秋日和」

 小津安二郎監督の「秋日和」を観ました。

 淡々とした映画で、物語に起伏がある訳ではないけど、何やら映画を観ているだけで懐かしい気がして、今の価値観とは違った価値観で生きる日本人の姿が新鮮な気がして、思わず作品の世界に浸ってしまいます。

 多分私が20代、30代の時に観ていたら、こういう感想は抱かなかったでしょうね。


 夫を亡くした三輪秋子(原節子)とその娘アヤ子(司葉子)が中心になって物語は進みます。

 亡くなった三輪の七回忌の法要に出た三輪の友人間宮(佐分利信)、平山(北竜二)、田口(中村伸郎)の3人は、適齢期になったアヤ子の結婚相手を見つけようとするが、アヤ子は母を一人残して結婚する気はないという。それでは秋子の再婚話も進めようとする3人と三輪母娘のすれ違いなどを描いた、しっとりとしたコメディ・タッチの作品です。

 あの頃の人達は、こういう話し方をしたのかな?ゆったりとして品があるような気がします。それに過剰なお節介が描かれていますが、母娘の互いを思いやる姿とともに、他人に対する関心の深さが今と違っているところが、とても人間的な感じです。

 女(男もか?)は適齢期になったら結婚するのが常識だった時代の物語。今の感覚から見ると少し奇妙かもしれませんが、こういう時代だったら少子高齢化の恐れは少ないかも知れませんね。




コメント